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出血を抑える「トラネキサム酸」、外傷タイプにより死亡率が上下 最適な治療法選択の第一歩 阪大

大阪大学の舘野丈太郎特任助教らの研究グループは、特定の外傷サブグループにおいて抗線溶薬「トラネキサム酸」の投与が生命予後に関連することを明らかにした。効果的な患者を早期に特定し、最適化された治療を施すことにつながるとしている。

トラネキサム酸は出血を抑制する効果があり外傷治療で用いられているが、どの患者に投与するのが最適かはまだはっきりとしていない。グループは臨床的特徴ごとに分けるフェノタイプ分類を用いて、この薬が生命予後に関連するかを評価した。

日本外傷データバンクを利用して、2019~21年までに登録された5万3703人を解析対象とした。その結果、トラネキサム酸を投与された患者群では、特定の外傷フェノタイプ(1、2、6、8 型)において、死亡率が有意に低下した。

一方で、他の外傷フェノタイプ(3、4型)では、トラネキサム酸の投与が死亡率を高める可能性が示唆されていたという。

舘野助教らは「今後、海外のデータセットで結果の再検証を行うとともに、分子病態の側面から結果のメカニズムを解明することを目指す」と説明。「患者の状態に最も適した治療法を選択することを可能にする点において個別化医療を進める第一歩になる」としている。