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遺伝研、均質なゼブラフィッシュ近交系「Mishima-AB」を作成 創薬や疾患の理解に貢献

国立遺伝学研究所の酒井則良らのグループは、野生型AB系統に着目し、その系統で兄妹交配を行い、新たに近交系「Mishima-AB (M-AB) 」系統を樹立した。遺伝子や疾患への理解にもつながりそうだ。

これまでゼブラフィッシュでは、雌性発生個体と組み合わせて遺伝的に均質な系統の作出が試みられてきた。だが、この系統は近親交配を続けることで耐性などが虚弱化してしまい十分遺伝的に均質化できていなかった。

また、マウスやラット、メダカは子供の性が遺伝的に決まるため、オスメスがほぼ1対1で現れるのに対して、ゼブラフィッシュは環境要因によって子どもの性比が偏ることが知られる。遺伝的均質化の過程でオス化しやすくなることも、ゼブラフィッシュで近交系を作り上げることが難しい要因だ。

今回の研究では、継代の際には3~5ペアーの兄妹を交配して、産卵数と受精率がよく、子ども集団に最も異常が認められないペアーを選んで弱勢を回避した。また、仔魚(しぎょ)の育成法を見直して受精後4日目からワムシをエサとして与え、生育過程の個体密度を下げた。

これにより、オス化を回避することにも成功。こうした取り組みにより、遺伝的に均質で、飼育しやすく、受精卵への遺伝子改変操作も可能な近交系M-ABの樹立に成功したという。

研究グループは「本研究で確立した遺伝的に均質な系統を用いることで、行動や免疫、創薬、生活習慣病の研究など、個体差が出やすい研究で、マウスを代替する動物モデルとてのゼブラフィッシュの活用が進み、遺伝子や疾患の理解が進むとよい」と説明している。