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熱伝導を操作できるシリコンナノ構造を実現 半導体デバイス進化や脱炭素社会に貢献 東大

東京大学のキム・ビョンギ特任助教らは、電子材料に用いられるシリコンにおいて、熱を運ぶ準粒子である「フォノン」の直線的運動を利用することで、マイナス193度付近で熱伝導率の物理的性質を逆転させる構造を実現した。熱エネルギーの有効利用にも効果が期待できるため、脱炭素社会の実現に貢献できるという。

近年、脱炭素社会に向けた半導体デバイスの熱管理や環境における未利用熱を利用した熱電変換技術の開発が進んでいる。熱伝導は方向性がなく、異方性をもつ構造を実現できれば、熱が伝わりやすい方向を決められる。これは電子デバイスの発熱が激しい部分から、上昇させたくない箇所を避けさせるなど新しい熱設計の自由度を提供することにつながる。

研究は、熱伝導の異方性を持つナノ構造として、日本の伝統的な和装柄の1つである青海

波に着目した。温度が高い場合、フォノンが拡散して熱が伝わるため、波形状に垂直な構造では熱伝導に寄与しない。一方、マイナス193度ほどに温度が低いときはフォノンが弾丸のように長い距離を移動することから、波形状に平行な構造では熱伝導率が低くなる。

熱伝導率測定のために作製したサンプルの電子顕微鏡像と、熱伝導率の測定を行って求めた熱伝導率の異方性の結果によると、マイナス193度以下では、フォノンの指向性に起因する逆流のため、波に平行な構造が低い熱伝導率であった。だが、それ以上になって指向性が消失して拡散的な熱伝導になると、波に垂直な構造よりも高い熱伝導率を示した。

これは温度を変えることで熱の流れる方向を90度変えられることを表す。研究グループは「温度によって異方性が逆転するコンセプトは、半導体デバイスの放熱設計に応用できると考えられ、半導体デバイスの信頼性の確保や長寿命化につながる熱管理を可能にする」とコメントしている。