順天堂大学の加賀英義准教授らの研究グループは、握力が低い人は2型糖尿病のリスクが高いことを発見した。サルコペニア状態でありインスリンの抵抗性もある人は、糖尿病の危険性が健常な人と比べて5倍高くなることが分かっている。
研究は65~84歳の文京区在住高齢者1629人を対象に実施。加齢による身体の衰え「サルコペニア」の指標として握力、代謝などを調節するインスリンが機能しない「インスリン抵抗性」の指標として「TyGインデックス」を用いて、2型糖尿病のリスクを検討した。
グループは「サルコペニア疑い」の定義として、握力が男性で28キログラム、女性で18キログラム未満とした。インスリン抵抗性、サルコペニア疑いにも当たらない「正常群」、インスリン抵抗性のみ該当する「インスリン抵抗性群」、サルコペニア疑いのある「サルコペニア疑い群」、両方である「併存群」の4群に分類。2型糖尿病の有病率を比較している。
その結果、「サルコペニア疑い群」、「インスリン抵抗性群」、「併存群」の順で、有病率が増加していることが明らかになった。また年齢、性別、脂質降下薬の使用といった基礎疾患を調整すると、併存群では正常群と比べて、糖尿病のリスクが約5倍になることが示されている。
グループは「握力低下とインスリン抵抗性の併存は、日本人における、サルコペニア肥満に代わる重要な病態を表している可能性がある」と説明。「今後、糖尿病だけでなく、その他の老年疾患である、認知症や骨粗鬆症、心血管疾患との関連を調査していく」としている。