広島大学の坊農秀雅教授らの研究グループは、モデル植物「シロイヌナズナ」を対象に、公共データベースに蓄積された大規模な遺伝子発現データを解析した。その結果、植物ホルモン「アブシジン酸(ABA)」など計5つの環境ストレスに関わる新たな遺伝子候補を発見している。今後、ストレス耐性の強い作物の開発に貢献するかもしれない。
研究では、公共データベースに蓄積された216組のシロイヌナズナ遺伝子発現データを用いて、ABA関連ストレス下での遺伝子発現を解析した。その結果、ABA、塩、乾燥、浸透圧、低温の5つのストレス処理に共通して発現量が変動する遺伝子が同定された。
シロイヌナズナの約2万8000の遺伝子のうち、14遺伝子が全てのストレス処理で発現上昇し、8遺伝子が全ての処理で発現低下したという。また、塩、乾燥、浸透圧ストレスで制御され、ABAや低温ストレスでは制御されない遺伝子群も確認された。
坊農教授らは「これらの遺伝子は、ゲノム編集ターゲット遺伝子の選定や新たなストレス応答メカニズムの解明のための重要な手がかりになる」とコメント。「データ数が増えれば、ストレス関連のデータも増加し、それらも含めてのデータ解析によって新たな発見が得られる」と期待を寄せている。