「なぜ細胞同士は引っ張られてもバラバラにならないのか」―。自然科学研究機構の古瀬幹夫教授らの研究グループは、細胞同士が離れないように密着を保つための仕組みを明らかにした。膜たんぱく質「クローディン」と「JAM-A」が大きな役割を果たしていると分かっており、接着がどのように修復されるのかの理解につながりそうだ。
細胞同士を接着させる構造である「接着結合」と「デスモソーム」「密着結合」は力を受けた際に細胞がバラバラにならないように保つことが知られている。だが、密着結合がどのように状態維持できているのかは分かっていなかった。
研究グループは密着結合の膜たんぱく質である「クローディン」と「JAM-A」を失った細胞を観察。ところどころ接着構造が断片化している部位が確認された。
顕微鏡で生きた細胞の接着構造が壊れる様子を確認した結果、正常な細胞では変形した時にも細胞同士の接着構造が途切れないのに対し、クローディンとJAM-Aを欠失した細胞では、引き伸ばされた際に細胞同士が離れてしまうことが認められている。
さらに、これら膜たんぱく質をなくした細胞では、力を感知するたんぱく質「ZO-1」の働きが不十分で細胞同士の接着強度が脆弱になると分かっている。
古瀬教授は「さまざまな接着構造がどのように連携して私たちの体をつなぎ合わせているか、また一旦壊れてしまった細胞同士の接着がどのようにして修復されるのかを理解することにつながる」と評価している。