京都大学の後藤慎平教授らのグループは29日、肺胞の細胞塊を利用した「on-gel培養法」を構築したと発表した。これまでよりも少ない材料で簡単に化合物のスクリーニングができる。米科学雑誌に同日付で掲載されている。
肺でのガス交換を担う「I型肺胞上⽪細胞(AT1)」は、ウイルス感染や環境刺激で損傷する。傷ついたAT1を補うため、肺胞を構成する「Ⅱ型肺胞上⽪細胞(AT2)」がAT1へ分化することが知られているが、培養細胞を⽤いてAT2からAT1への変化を選択的に再現することはできていなかった。
on-gel培養法は96ウェル培養プレート底⾯にマトリゲルを敷き、ヒトiPS細胞から作製した分化の途中段階である「肺胞上⽪前駆細胞」またはAT2をマトリゲル層の上で培養する方法。
この手法は少ない細胞で肺胞スフェロイドを形成することができるメリットに加えて、スクリーニングに⽤いる化合物の添加や発光測定などの操作が容易だという。
研究グループは「今後、本研究の成果が肺の再⽣のための新たな治療法の開発につながることが期待される」としている。