東京大学の宮本通大学院生らのグループは、タコノキ科の植物である「アダン」が花序で繁殖する微小甲虫によって送粉されることに加え、花序が発熱する「発熱植物」であることを明らかにした。タコノキ科植物で昆虫による送粉と花序の発熱が示されたことは初めて。
タコノキ科の送粉知見は乏しく、風で花粉を飛ばす数例が示唆されていた程度でその全貌は謎に包まれている。研究チームは琉球列島に生育するアダンをモデルとしてタコノキ属の送粉生態を解明することを目指した。
チームはアダンの送粉様式を明らかにするため、2020~22年にかけて、アダンの開花期である夏季を中心に観察。その結果、アダンから甲虫「ケシキスイ」の成虫が大量に見つかった。
ケシキスイの体表についた花粉を調べると、約4割にアダンの花粉が付着していた。これは、ケシキスイがアダンの雄から雌の花序に花粉を運んでいたことを示唆している。
また、花序の発熱の有無を確認するため、サーモグラフィーカメラを用いて雌雄の花序の温度測定を行った。すると、ケシキスイの訪花が特に多い開花期は、雌雄の花序ともに日没後に発熱が見られることが分かっている。
研究グループは「今回、タコノキ科で初めての虫媒が科内で見つかったことは、世界のタコノキ科の送粉生態と進化への理解を深める鍵となる」と説明している。