筑波大学の濱⽥理⼈准教授は免疫細胞「マクロファージ」が寒さに対抗して体温を上昇させるために、この機能を調節している「褐⾊(かっしょく)脂肪組織」の熱産⽣をコントロールするメカニズムを解明した。
人体は体の熱産生メカニズムにより体温を一定に保つ方法の1つである「非震え熱産生」は、エネルギーの効率的利用と長時間の体温維持に重要な役割を果たす。だが、この仕組みやプロセスを調節するマクロファージの役割は不明なままであった。
濵田准教授はマクロファージの恒常性維持機能に重要な転写因⼦「MAFB」に注目。その⽋損が褐⾊脂肪組織の熱産⽣能⼒にどのように影響するかを、マクロファージのMAFB遺伝⼦を⽋損させたマウスを使って解析した。
その結果、⽋損マウスは直腸の温度と体表の温度が減少することが判明。また、これに伴い、⽋損マウスの体重が増加していた。褐⾊脂肪組織を分析すると、熱産⽣に必要な酵素UCP1の発現が減少していることが明らかになっている。
褐⾊脂肪組織を透明化し交感神経を染⾊して可視化したところ、⽋損マウスでは褐⾊脂肪組織内の交感神経線維密度が野⽣型に⽐べて減少していた。さらに、MAFBが炎症を促進する「IL-6」を抑制し、これが褐⾊脂肪組織内での神経成⻑因⼦(NGF)の発現減少および交感神経線維の減少につながることも明らかになった。
濵田准教授は「マクロファージにおける転写因⼦MAFBが交感神経の成⻑を促進し、それが褐⾊脂肪組織のエネルギー代謝に不可⽋であることが明らかになった」と説明。「この発⾒は、体を温めることによる冷え性の治療やエネルギー消費を促すことによる肥満防⽌に向けた新しいアプローチにつながる」としている。