帝京大学の槇村浩一教授らの研究グループは、国内の動物園で飼育されている全コアラを調べ、人にも感染するコアラ病(クリプトコックス症)の病原菌「クリプトコックス」の保菌状況とその仕組みを明らかにした。
コアラは病原性酵母「クリプトコックス・ガッティ」が引き起こすクリプトコックス症に罹患しやすい。これは国内に存在しない菌であり、コアラは国内唯一の保菌動物。人間にうつると肺炎などを引き起こす。そのため、保菌する国内コアラを確かめる必要があった。
研究グループは国内の46頭を対象に調査をしたところ、30%が菌を有していることが分かった。そのうち2株のガッティが検出されている。
同じ動物園のコアラから同タイプのクリプトコックスが見つかる傾向にあり、排泄した菌が土の中で増殖し、空気中に舞い上がって感染していると推測された。また、菌を宿したコアラが他園に異動すると持ち込むことも判明している。
研究グループは成果について「コアラにおけるクリプトコックス症の防疫に役立つとともに、人獣共通感染症の原因菌となる本菌の疫学を示すものとなった」と講評。「今後もコアラのクリプトコックス症の調査を通して、ヒトとコアラの健康に寄与していく」としている。