岡山大学の衣笠秀明助教らの研究グループは、早期下咽頭(かいんとう)がん患者が持つ唾液のDCC遺伝子のDNAメチル化が、がんでない人の唾液と比較して高頻度で発生していると発見した。これを調べることで下咽頭がんを診断可能だと明らかにした。英学術雑誌のオンライン版に27日付で掲載されている。
下咽頭がんは早期に発見できれば、内視鏡による切除が可能だ。だが、安全や時間の問題から患者全員に咽頭の観察をして手術することは現実的ではない。下咽頭がんのハイリスク患者を判断する簡単で刺激の少ない方法の確立が望まれている。
研究グループは早期下咽頭がんに対して内視鏡治療を行う患者と下咽頭がんのない人の唾液中のDNAを抽出。候補遺伝子についてその発現に影響を与える「メチル化」の頻度を比較検討した。
その結果、下咽頭がんのない場合と比較して早期下咽頭がん治療前の患者の唾液中DNAではDCC遺伝子のメチル化頻度が極めて高いと分かった。DCC遺伝子のメチル化を調べることで感度82.8%、特異度90.2%と高い割合で下咽頭がんの診断が可能であると認められている。
衣笠助教は「私たちが検証した手法を用いて、内視鏡による咽頭精密検査が必要なハイリスクの患者さんを事前に判定し、内視鏡による早期発見治療につなげることで、患者さんの生活の質の改善に大きく寄与できる」とコメントしている。