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木星の衛星「エウロパ」の構造を衝突シミュレーションで分析 少なくとも20キロの氷殻 米バミュー大

米パデュー大学の脇田茂研究員らのチームは、木星の衛星「エウロパ」の氷殻の厚さとその構造を明らかにしている。これはエウロパに生命が居住するかを検討する上での重要な情報で今後の展開が注目される。

エウロパはその表面が氷で覆われている。この氷の厚さは直接計測できないため、クレーターなどの観測から得られる情報を用いて観測的に求めた分厚さについての議論が続いている。

研究チームはこれまでの探査機で見つかった「多重リング盆地」と呼ばれる同心円状の構造を示す大きなクレーターに着目。この多重リング盆地の形成は氷殻の構造に強い影響を受けるため、その形成過程を解明することで氷殻の厚さに制限をつけられると考えた。

多重リング盆地を形成する厚いガラス状の氷の構造を明らかにするため、国立天文台が運用する「計算サーバ」と数値衝突計算コード「iSALE(イサレ)」を用いた天体衝突シミュレーションを行った。

その結果、多重リング盆地の形成には、硬い層ともろい層から成る少なくとも厚さが20キロメートルの厚い氷殻が必要であると判明。さらに、20キロ以上の氷殻の場合は、衛星表面の2つの多重リング盆地の観測結果とよく一致する結果を示した。

脇田研究員は「多重リング盆地を観測する際、今回の研究で得られた厚い氷を念頭に置くと氷の厚さだけでなく、内部海の深さの情報も得られるかもしれない。そうすることでよりエウロパでの生命居住の可能性を明確にできる」と述べている。