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「ゴルジ体」の一生の時空間ダイナミクス 形成の足場となる膜区画を酵母細胞で発見 理研

真核生物の細胞にみられる細胞小器官の一つである「ゴルジ体」。小胞体(ER)で作られた多種 の積荷タンパク質を取り込んで糖鎖修飾を施し、それぞれが働くべき場所に選別・搬出するという、細胞内物質輸送の中心的な役割を担っている。理化学研究所の戸島拓郎上級研究員らのチームは生きた細胞の中で、「ゴルジ体」が生まれてから消えるまでのダイナミクスを明らかにした。疾患やウイルス感染のメカニズムの解明に貢献することが期待できる。

研究チームは、独自に開発した「高速高解像度共焦点顕微鏡システム(SCLIM)」を駆使して、生きた酵母細胞におけるゴルジ体の時空間ダイナミクスを精密に観察した。

その結果、酵母細胞では初めて小胞体とゴルジ体の間に、「ER-ゴルジ中間区画(ERGIC)」と呼ばれる膜区画を発見。これがその性質を変えていくことでゴルジ体が生まれることが分かった。

また、その後にゴルジ体がさらにトランスゴルジ網(TGN)という選別輸送に特化した区画に成熟していく詳細な過程も判明している。

研究グループは「酵母細胞においてもこれらと相同な区画が発見されたことで、生物進化の過程で膜交通の分子機構が高度に保存されてきたことが強く示唆される」としている。