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排卵誘発剤投与の可否に一石 誘発剤は染色体分配に影響なし 近畿大が企業、病院と研究

近畿⼤学と扶桑薬品⼯業、浅⽥レディースクリニックの研究グループは、不妊治療で⼥性に⾏う排卵誘発剤の投与が、受精卵の染⾊体分配や発⽣の速さに⼤きな影響を与えないことを明らかにした。⻑年議論されている排卵誘発剤投与の可否に⼀⽯を投じる成果。また、薬剤を投与したマウスから1.4倍多く受精卵が得られたとしている。

不妊症に対処する生殖補助医療には2種類存在する。誘発剤を投与する「刺激周期法」と⾃然なサイクルで卵⼦を得る「⾃然周期法」だ。負担が少ない刺激周期法が望まれてきたが、排卵誘発剤投与が卵⼦の質にどのような影響を与えるのか検証した研究はなかった。

研究グループはマウスを⽤いて安定的なデータを取得し、排卵誘発剤投与の有無が卵⼦に与える影響を検討した。まず、マウスを2群に分け、片方は通常の誘発剤投与による過剰排卵を促した。そしてもう⼀⽅では、⾃然排卵により卵⼦を得た。

それぞれに対して同じ雄の精⼦を⽤いて体外受精を⾏い、正常な受精卵を確認した。その結果、薬剤投与のマウス1匹あたり13.5個、そうでない場合で9.4個の受精卵が得られた。およそ1.4倍の違いがでている。

さらに、ダウン症などにつながる染⾊体分配時の異常の頻度や発⽣速度の計測をすると、2群に有意な差は認められなかったという。精卵の染⾊体分配や発⽣速度に悪影響がないことから、不妊治療の際には、誘発剤投与により採卵する⽅が妊娠の機会を増やすために有効であるとしている。

同大の山縣一夫教授は「⽣殖補助医療現場では、患者ごとに性質が異なり、さまざまな治療法が⾏われいる。そのため、定量的な結果を導くことが困難」と指摘。「マウスを⽤いた研究は、統計的結論を導くことができることから、⼤きな意味がある」と講評している。