東京大学の中川貴之准教授らの研究グループは、抗HER2抗体「トラスツズマブ」と抗体薬物複合体「トラスツズマブ-エムタンシン(T-DM1)」が細胞の生存率を低下させ、特にT-DM1で大きな効果を認められたとしている。
研究グループは医薬品として開発された抗HER2抗体のトラスツズマブとこれに抗がん剤を結合させた抗体薬物複合体トラスツズマブ-エムタンシン(T-DM1)に着目。まず犬尿路上皮がん細胞株に対する効果を検討した。
その結果、いずれの薬剤も濃度依存的に細胞株の生存率を低下させ、特にT-DM1でより大きな効果が認められた。検証を行ったところ、T-DM1により腫瘍細胞に細胞死が誘導されることが分かっている。
続いて、担がんモデルマウスに対する各抗体薬の効果を検討。犬尿路上皮がん細胞株を皮下移植した免疫不全マウスに各抗体薬を投与したところ、T-DM1により腫瘤(しゅりゅう)体積の増大が抑制された。
つまり、犬尿路上皮がんの細胞株と担がんモデルマウスに対してT-DM1が抗腫瘍効果を示し、その作用メカニズムとして細胞死への誘導が重要であることが明らかになっている。
研究グループは「今後の研究において犬に対するT-DM1の至適用量を検討後、臨床試験を進めることで、犬尿路上皮癌に対する新たな治療法を提唱できる可能性がある」とコメントしている。