海洋研究開発機構(JAMSTEC)の馬場雄也主任研究員らは、機構で開発した雲モデルが、数値予報モデルにおいて熱帯低気圧の気候学的な性質の再現性を大きく改善し、将来的に台風の予測精度向上が期待できると発表している。
台風は人命や国民の財産を損なう恐れがあり、気象庁は予報モデルの改善を行ってきた。台風の進路予測については着実な精度向上が見られる一方、強度は10年ほど改善が見られなかった。原因は、予報モデルの中の「雲モデル」にあると考えられており、改良が求められている。
JAMSTECは気候変動予測のための新しい雲モデルを開発した。気候の予報性能を向上させられると考え、所有するスーパーコンピューター「地球シミュレータ」を用いて検証を行った。
その結果、新しい雲モデルを使った予測では熱帯低気圧の気候学的性質の再現性が大きく向上すると分かった。特に、再現される熱帯低気圧の発生頻度や強度が大きく改善している。JAMSTECは「台風表現の基礎的な性能向上を示すもので、この雲モデルを利用することで将来的に数値予報モデルの性能向上が期待される」と評価している。