大阪大学の原圭史郎教授らによる研究グループは、将来世代の視点から現在の意思決定を考察する「仮想将来世代」と呼ばれる仕組みを導入し、水熱技術の将来性をテーマにその効果を検証。現代だけでなく将来の視点を取り入れ、技術を持続可能性の観点から評価しデザインする意義を示している。
研究グループは、仮想将来世代の仕組みを応用して、技術の将来性を評価するための新たな方法を提起し、水熱技術を評価対象とした討議実験を行うことにより、その有効性や効果を検証した。
研究では学部・大学院生18人と大学教員5人の計23人が実験に参加し、4グループ(A,B,C,D)に分けて、「現在の視点から検討したケース」「仮想将来世代を導入したケース」で議論を実施している。
研究では評価対象の技術として、資源エネルギー問題の解決に資する有望な技術と考えられる「水熱反応」を取り上げた。水熱反応を利用して得られる「水熱ポーラスガラス」は廃ガラスなどの副産物を原料として製造できることから、資源循環型の技術としても有望視されてきましたが、社会実装上の課題も指摘されてきた。
その結果、現在の視点から検討したケースと仮想将来世代を導入したケースでは、結論が変化することが分かっている。また、仮想将来世代のケースでは現在の制約要件に捉われない、新たな社会実装シナリオが検討可能であることや、社会の中での技術シーズの価値や位置づけが相対化されることが示された。
原教授は「持続可能性を基盤とした技術開発は今後ますます重要であり、本研究が将来世代の視点から技術評価を行うための新たな研究領域の発展につながればよい」とコメントしている。