新型コロナウイルス感染症禍のリモートワークはどのような結果を生んだのか―。京都大学の内田由紀子教授らの研究グループはこの問いに答えるアンケートを実施した。成果主義の企業ほどリモートワークを導入する傾向にあり、組織改革や働き方改革の今後の可能性を示している。
日本の企業で働く従業員を対象にパンデミック直前の2020年3月を起点に1年ごとに計3回のオンライン調査を行った。性別、年代、職階ごとの参加者が均等になるよう募集し、367人を分析対象とした。
それによると、成果主義制度があるほどリモートワークが導入、継続されやすいという結果が得られた。伝統的な仕事のプロセスを評価する方法は遠隔業務との適合性が低い一方で、成果主義であれば適正な評価が可能であったと解釈できる。
また、リモートワークによる心理的影響を調査。その結果、「職場で常に自分自身の意見を持つようにしている」などの独立的な心理傾向が増加し、「所属している会社/組織に愛着がある」など組織への意識も高まっていた。調査で負の影響は見られず、孤立感は減少していた。
研究グループは「日本の企業においては比較的新しい、成果に基づく評価制度やそれから派生するような個人の独立性などがリモートワークと適合性が高いという仮説を支持する方向の結果であった」と分析。日本の職場での組織改革や働き方改革の方策となる可能性を示唆している。