盛山正仁文部科学省は10月4日文教速報などのインタビューに応じた。小中学校の学級編成や、給特法、文化庁宗務課の京都完全移転、来春設置予定の火山本部、さらにいじめ問題に対する考えを語った。それぞれ現在の進めている施策を着実に進めながら、多くの関係者の意見を取り入れよりよいものとする方針を示した。また、いじめ問題に関しては、「〝あってはならない〟ということが、隠匿などを生むのではないか」との問いに対して、「やはり〝あってはならない〟と関係者が思うことが大事」と指摘。そのうえで、早い段階で対応することの重要性を強調した。大臣インタビュー要旨は次のとおり(高等教育関連は「文教速報」10月11日付に掲載しています)。
――小中学校の学級編成基準について。2025年度に向けて進んでいる小学校の35人学級が完遂し、続いて中学校の35人学級にしていくべきという議論、意見が政府与党内にあるが、それに対するご認識は?。また、過去には30人学級が必要だという大臣もいたが、小中学校の望ましい学級規模をお聞かせいただきたい
〈盛山大臣〉令和3年3月に義務教育標準法を改正し、公立小学校の学級編成を35人に引き下げた。ただ、何人が適切かというは、なかなか簡単に答えでない問いだと思う。ただ、一人ひとりに応じたきめ細かな指導が必要。それは小学校だけではないと思う。
さはさりながら、小学校の学級編成の標準基準の引き下げを計画的に実施するなかで、学力の育成やそのほかの教育活動に与える影響等について検証などを行ったうえで、その結果を踏まえつつ、中学校等を含め、学校の望ましい指導体制の構築に向けて、これから取り組んでいく。
私の(学生の)頃は、まずは学校を増やすということで、今の35人とはだいぶ違うクラス規模だった。そして、中高も55人クラス。そんななかで私は育ってきたが、先生の立場からすると、きめ細かい指導をするためには、人数が少ないほうが望ましいに決まっている。究極的にはマンツーマンが一番いい。ただ、現実に今も、人手不足も含めて、教師の働き方改革、教員の労働環境改善ということが言われている。なかなかそう簡単にいかないのも事実。
繰り返しになるが、今進めている施策がどういうことになるか。メリット、デメリットの検証を行いながら、今後、小学校以外の検討を進めていくことではないかと、現状では思う。
――給特法は教員の働き方改革の一番のキモ。自民党、労働組合双方から意見が出ているが、どのようにお考えか。
〈盛山大臣〉学校での働き方改革については、文部科学省では令和元年の給特法改正を踏まえて、勤務時間の上限等を定める指針を策定するとともに、教職員定数の改正や支援スタッフの充実、学校DXの推進など総合的に進めている。令和4年実施の勤務実態調査の速報値によると、前回調査と比べ、在校等時間が減少している。成果は着実に出ているが、以前として未だ長時間勤務の先生が多いのもの事実。引き続き取り組みを加速化させていく必要がある。
現在の給特法の仕組みでは、公立学校の教師は、それぞれの自発性に基づく勤務に期待する面が大きいなどにより、どこまでが職務であるかと切り分けにくいという教員の職務の特性などから時間外勤務ではなく、勤務時間の内外を包括的に評価する教職調整額を支給するということになっている。
教師の処遇を定めた給特法の在り方を含めて、今後具体的に検討していくべき課題であると認識しているが、中教審で現在総合的に検討が進められている。引き続き、教育の質の向上に向けて働き方改革、処遇の改善、学校の指導運営体制の充実、これらを進めていきたい。これからまだ時間がかかると思う。
ー―大臣は就任当時に文化庁の京都庁舎を視察したが、どのようになれば、宗務課の完全京都移転が完了するのか。
〈盛山大臣〉基本的に、京都に置くという原則を見直すことは、今、誰も考えていない。旧統一教会問題、これに全精力を入れて対応している。まずは対応を行う。そして、業務に一定の区切りがついたら、ということだと思う。今の時点で見通しなどはないが、方向性としての京都への移転を見直すことは誰も考えていない。
ーー火山研究推進本部が文科省に来春設置される。
〈盛山大臣〉長野県を含む関係自治体等の要請を受けて、活火山法が改正され、来年4月に文科省に火山研究推進本部が設置されることとなった。私が本部長を務めている同本部では、改正活火山法に基づいて、火山の観測などの調査結果を収集し、分析して総合的な評価などを行うこととしている。
総合的な評価の具体的な中身は現時点では決まっていないが、先月の19日に火山調査研究推進本部の設置に向けた準備会を開催した。火山研究者の方々からは、長期的な火山活動の予測に向けた手法の開発、あるいは噴火後も含めた火山活動の評価が重要など、さまざまな意見が寄せられた。準備会の議論の結果を、来年4月からの本部運営に適切に反映していきたいと考えている。
ーーいじめに関して。いじめ問題が起きた時に「あってはならない」と大臣、教育長などは表現するが、実際にいじめは起こる。「あってはならない」という表現自体がいじめ隠匿等につながっているとの声があるが。
〈盛山大臣〉「あってはならない」ことという認識を関係者が持つことは必要。私も自分が子供のころに受けた経験がある。ひょっとすると、私自身が知らいない間にいじめを行っていたかもしれない。だが、いじめは許されないもの。無くしていかなくてはならないものだと思う。
大人に比べて子どもは純粋なので、かえって自分の気持ちがストレートに出て、いじめという行動につながってしまう。でも、どういう子ども、学校、場所であっても、いじめが起こりうるということは、学校、教育委員会、社会全体でまずは共有すべき。
そのうえで、「いじめはなくしましょう」「あってはならない」ということで、どのように対応していくか。そして、いかに早い段階から、深刻にならないうちに気付いて対応するのかということが大事。
そういうようなことで、いじめ防止のための基本的な方針を作って、施策を進めている。また、先生が一人で抱え込むのではなく、学校の組織としての相談、あるいは学校が学校の中だけで対応できるものではない場合、必要に応じて、警察や都道府県、市町村の地方公共団体部局との連携などについても重要ということを、今年2月に、警察との連携の徹底を求める通知を、文部科学省では発出している。法や基本方針に基づいて適切な対応が行われるように、周知徹底を図っていくことだと思う。
ただ、時代が変わった。私が子供のころはパソコンやインターネットがない時代。近所に原っぱがあった。ガキ大将もいて、いじめっ子もいた。匿名でインターネットで批判をすることがなかった、そういう環境だった。そういう点で、今のほうが陰湿なことが起こりやすい。だからこそ、今の時代にあったいじめ対策をできるだけ素早く、学校だけでなく、親御さんも含めて、いじめへの対応を図ることが必要。いじめをしている子供がいたら、「あなたが同じような立場になったらどう思う」ということを含めて、当事者の心に少しでも寄り添った対応ができればありがたい。