気候変動問題に関する国際的な枠組みである「パリ協定」。温暖化防止に向けて二酸化炭素排出量の削減などを目指すものだが、世界の超大国アメリカが一時この国際枠組みから脱退した時期があった。現大統領への返り咲きを目指して、カラマ・ハリス現副大統領と選挙戦で戦っているドナルド・トランプその人だ。2017年6月に同協定からの脱退を表明。2年後の2019年4月に正式に離脱を通告し、翌20年11月に正式に脱退となった。米国はバイデン政権下で正式に復帰しているが、超大国・米国の枠組み離脱に、世界は大きく動揺した。JST報告書から、パリ協定離脱の経緯とともに、トランプ政権下の環境政策を振り返ってみた。
□環境規制を廃止・縮小
トランプ氏が脱退の理由として挙げたのは、「パリ協定への参加は米国経済に対し、今後数十年で3兆ドルの負担を強いる」とのコンサルティングによる報告。また、マサチューセッツ工科大学の研究者によると、パリ協定加盟国が目標達成したとしても、その効果は2100年までに地球温暖化の上昇を食い止める効果はわずか0.2度と無視しうるものであることなども、理由としてあげた。
トランプ政権では、政府による規制的な規定や基準を改正、廃止、縮小することで、経済成長や雇用創造を促進させる政策を積極的に展開。「エネルギー生産、経済成長を阻害する規制を停止、改正、廃止することは米国の利益である」とする大統領令を2017年3月に署名した。
さらに、環境保護庁など連邦政府機関での科学的知見を利用した政策決定プロセスの改革も実施。環境保護庁から資金を受領した研究者は、同庁の諮問会議の委員から除外されるといったことにより、環境科学の研究者の政策決定への参画に制約を課した。