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博士人材の就職支援、どんな方策が必要? マッチングが上手くいかない背景とは アカリク・山田諒代表

アカリク・山田諒代表

日本の人口100万人あたりの博士号取得者は123人、これは英国の約3分の1の数字だ。博士課程への進学者は減少傾向にあり、その一因として博士の就職難が指摘されている。博士の就職を促進する国の有識者会議の構成員を務め、大学院生のためのスカウト型就職情報サイトを運営する「アカリク」の山田諒代表に話を聞いた。

――博士人材の就職が新卒よりもマッチングが上手くいかないのはなぜか。

新卒と同じイメージではスムーズに採りづらいところがある。例えば、大学生はインターンシップをして、本選考を行う余裕がある。けれども、大学院生は研究が第一。まずは研究成果を出してから就職活動をするケースがあり、毎日研究へ長時間を費やしている。そのため学生と同様な就活はできていない。

また、博士に対する理解が追い付いていないという課題もある。学部生と同じように選考すれば、彼らの専門性やビジネス力を見抜くことは難しい。さらに、博士に対する期待値が実際よりも高い場合もあり、その場合当てはまる人材が少なく雇用もできない。

博士側も自身の能力をどのように説明したらよいか分からないケースがあり、企業も評価軸を確立できていないことがある。まだまだ状況を改善していく余地がある。

――博士人材が今後、企業と適切にマッチングするためにはどのような対策が求められているのでしょうか。

より多くの企業に博士を知ってもらい、博士も多様な会社に目を向けられる機会を作るということだと思う。国では、2カ月の間、博士が企業の業務に参加する「ジョブ型研究インターンシップ」をしており、弊社も現実の企業課題の解決案を博士学生に検討・立案し発表してもらう「イノベーションサミット」というワークショップイベントを開いている。

イベントに参加した企業からは、「期待以上に課題解決に貢献してくれた」という声があり、博士からは「考えていなかった分野でも自分の研究が生かせた」などの感想をいただいている。企業と博士の両方の目線が合った取り組みができるとよい。そうした体験がそれぞれの感覚や視点などの一致・不一致の発見につながり、より良いマッチングにつながる。

――学部卒と博士を比較した場合に、どちらかのほうが採用され難いということはありますか。

そういうことはないですね。特定の職務内容で働ける人を雇うジョブ型雇用が広まって、専門性がある人材の採用は加熱してきている。ただ、企業側が博士人材をはじめとする高度専門人材を採用するためにどのように宣伝や採用をしたらよいかを悩むケースがある。最近でも、ある半導体メーカーからそうしたご相談をいただいた。

博士人材のキャリアパスは依然として不明瞭であるので、就活が難しいというイメージがある。そして、またそれが博士課程への進学率低下の要因となっているとも考えられている。博士就活の経験者は少なく、周囲に相談もできない場合が多い。私たちがその状況を変えていかないといけない。

――博士人材の就職を支援していくために求められていることは何ですか。

ジョブ型研究インターンシップをはじめ、まずは入社経路の拡大というところ。あとは理系分野であれば専門領域ごとの産業界と大学組織の連携。同じ博士でもやっぱり専門分野ごとの特性というのがある。

一方で文系となると、専門分野をどのように生かせるかを検討するべきですよね。その生かし方を企業と学生の両方に紹介していくべきでしょう。アカリクでも頑張っているところですが、入社経路の拡大も図っていかねばなりません。

国や大学、企業が相互に連携し、博士就活のあり方が良い方向に変化していくことを期待している。また私たちも関係するステークホルダーと協働しながら、そこに向けて積極的な取り組みを継続していきたい。