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民博が9月から「ヒンドゥー神像の世界」展

国立民族学博物館(大阪府吹田市千里万博公園)では、特別展「交感する神と人 ヒンドゥー神像の世界」を9月14日から12月5日まで開催する。多神教で知られるヒンドゥー教の神がみは、さまざまな素材でつくられた神像によって人びとの前に姿を現している。人々は神像を沐浴させたり、着飾らせたりといった具体的な働きかけを通して神像をいとおしみ、神に願いを届けようとしている。この特別展では、インド、ネパールだけでなく日本やヨーロッパでつくられた多彩なヒンドゥー教の神像を展示するとともに、神と人との交流の姿を紹介し、人びとが神がみにささげる愛や願いのかたちに迫る。

ヒンドゥー教のあまたの神がみは、石や金属、土器、陶器などの立像、仮面、絵画や印刷物、タイル、刺繍、さらには絵本、コミック、切手やシールなど、さまざまなモノを通じて現れている。これらの神像は人びとが五感を通じて神と交流するための重要な媒体となってきた。

神像との交流の核心には神への「愛」がある。この「愛」には神に愛されるという受動的側面よりも、人が神に愛をもって接近するという能動的、主体的側面が強く表れている。人びとはさまざまな神話を踏まえながら、親がいたずらな子を愛おしんだり、愛人が相手を熱烈に愛したり、あるいは忠実なしもべが主人に無償の奉仕をするように、神像に具体的に愛を捧げる。

また、日常的な礼拝でも実際に神像を沐浴させたり、着飾らせたりするなど具体的な働きかけを通して神像を歓待し、願いを聞き届けて貰おうとする。

今秋開催するヒンドゥー神像の世界展ではこの「神への愛」に基づいた、神と人との交流のさまざまなかたちの展示を中心にすえる。具体的には現代インドで特に人気のある神がみの神話を表現した図像の展示や神像への働きかけ方がわかる資料(神像の個別的なデコレーション、身体的感覚が発揮される儀礼用具などの展示や、儀礼の実際を取材した映像や写真など)を展示する。それらを通じて、多神教的なヒンドゥー教世界や、そこに登場する弱みや欲望も合わせもった神がみの存在を紹介する。

こういった神像はインドやネパールだけではなく、日本やヨーロッパでも制作され、ヒンドゥー教の世界で用いられていた。同展では南アジアの外の世界で作られた神像も展示し、信仰に関わるモノのグローバルな流通の一端も紹介する。