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痩せた土壌で小さな虫たちを支える根の〝じゅうたん〟 極端に酸性な土壌における針葉樹(ヒノキ)と虫のかかわり(第18903号)

名古屋大学、東京農工大学、森林研究・整備機構森林総合研究所の研究グループは、極端に酸性で痩せた土壌では、樹木が生み出す大量の細根が、そこに棲む土壌動物を支える役割を果たしていることを新たに発見した。

 酸性で痩せた土壌が広がる熱帯雨林の樹木は、細い根が密集したマット(ルートマット)を発達させて養分をスムーズに獲得する場合があることが明らかにされている。しかし、「温帯の針葉樹でも酸性土壌であれば熱帯雨林の樹木と同じような力を発揮できるのか」、「そうした樹木の環境応答が土壌に棲む動物にまで影響を与えるのか」は不明だった。

 研究グループは、ルートマットの形成が報告されているヒノキの人工林を例に、ルートマットの発達と土壌酸性の強さの関係、ルートマットの発達とトビムシやダニのような微小な節足動物等の土壌動物との関係を調査した。その結果、極端に酸性な土壌では、ヒノキの厚いルートマットが存在するだけでなく、その厚さの違いが一部の動物を増やして、メンバー構成の違いを生み出していることを示した。

 土壌環境と樹木の応答の関係性、それに対する土壌動物の応答という土壌生態系で起こる一連の流れを示した今回の研究成果は、生産力が乏しいとされる酸性土壌における人工林の維持・管理の指針づくりに貢献すると期待されている。