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稲わらを石灰処理後に高密度化するCaPPAプロセス(第18885号)

農研機構と足立石灰工業(株)は、石灰処理後に稲わらを圧縮し体積を抑える「CaPPAプロセス」を開発した。

 稲わらは、発酵性の糖を含むことから、これを取り出してエタノールに変換することで、環境価値の高いバイオ燃料や化成品原料などとして利用できる。しかし、空隙が多くかさばるため、梱包しても輸送・貯蔵の効率が悪く、利用現場まで安定供給できずに多くがほ場に残されている。この課題を解決するため、稲わらを梱包後に近隣地域内の原料加工拠点まで短距離輸送し、そこで一次加工・高密度化するシステムの構築が求められている。

 農研機構と足立石灰工業(株)の研究チームは、稲わら裁断物が常温下での石灰処理により圧縮しやすくなることを見出し、この処理法を「CaPPA(Calcium hydroxide Pretreatment for Pressing Agricultural by‐products:農業副産物を加圧するための消石灰前処理)プロセス」と名付けた。この方法で改質した稲わらを加熱加圧すると、改質前(見かけ密度0.1g/㎤)に比べて密度が向上した(見かけ密度0.23g/㎤)。

 また、CaPPAプロセスは、高密度化特性に加え、稲わらの利用価値も大きく高める。まず、石灰改質によって稲わらが大幅に酵素糖化されやすくなる。安定な糖化特性をもつ高密度なペレットに加工することで、貯蔵性と計量性(安定した品質をもつ原料の計り取りやすさ)を備えた直接糖化可能な原料として、大規模バイオエタノール製造工場向けだけでなく、自治体や中小規模事業所などでの多様なニーズに応じた供給が可能になる。さらに、貯蔵性の高いペレットなどを長期間備蓄することで、現在、「炭素プール」としてカウントされている伐採木材製品と同様に、農業由来の新たな脱炭素メリットを訴求できると期待されている。

 研究チームは、今後、原料加工拠点候補の石灰製造企業などとの連携を図りつつ、CaPPAプロセス技術の高度化と実証に向けた検討を進めていくとしている。また、小規模から導入可能な糖化・発酵技術、その装置・設備開発をバイオ企業等と連携して加速し、地域発の脱・低炭素、日本型バイオエコノミーの新展開に繋げていく方針だ。