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今夏の記録的な高温や大雨に地球温暖化が寄与 文科省Pと気象研の合同研究で明らかに(第18874号)

今年6月から8月の記録的な高温や8月上旬頃の熊本県を中心とする大雨に地球温暖化がどの程度寄与していたか解析したところ、夏の記録的な高温は地球温暖化の影響がなかったと仮定した場合は発生し得なかったことや、8月上旬頃の大雨は地球温暖化の影響で総雨量が増加していたことなどが分かった。この研究は、文部科学省気候変動予測先端研究プログラムと気象庁気象研究所の合同で実施された。

今夏の天候は、6月から記録的な高温となり、夏(6~8月)の平均気温は気象庁の統計開始以降1位の記録を更新した。また、8月前半は九州地方や北陸地方を中心に一部地域で 記録的な大雨となり、九州地方では多数の線状降水帯が発生した。

今回、今夏の高温の発生確率を見積もったところ、発生確率は1.63%(誤差幅0.55~3.07%)(約60年に一度)であった一方、地球温暖化の影響が無かったと仮定した状況下では、その他の気候条件が同じであっても、発生確率はほぼ0%であったことが明らかとなった。

また、8月10日から11日に発生した熊本県を中心とする大雨を対象に地球温暖化の影響を 評価したところ、地球温暖化が無かったと仮定した場合に比べて総雨量が約25%増加していたことが判明した。

地球温暖化は喫緊の課題であり、人々の日々の生活にも影響が現れ始めている。日本では、毎年のように甚大な被害を伴う気象災害が発生しているが、地球温暖化の進行とともに、極端現象の発生確率と強さがさらに増加することが予測されている。

ここ数年飛躍的に発展した計算機能力を活用し、温暖化した気候状態と温暖化しなかった気候状態のそれぞれにおいて、起こり得る大気の流れの状態を大量の気候シミュレーションによって網羅的に計算することで、個別の気象条件下で生じる極端な気象現象に対する長期的な地球温暖化の影響を科学的に定量化する手法をイベント・アトリビュー(EA)と呼ぶ。

文部科学省では、気候変動予測先端研究プログラムを通じ、全ての気候変動対策の基盤とな る科学的知見の充実を図り、気候変動適応策の推進に取り組んでいる。このなかで、気象庁気象研究所と合同で、極端現象の発生確率及び強さに対する地球温暖化の影響を定量化するEAを実施している。

この研究は、「地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース」を応用して開発された、極端現象の発生確率に対する地球温暖化の影響を迅速に見積もるEAの手法や、大雨の総雨量に対する地球温暖化の評価手法を用いて行われた。