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東京建物と森林総研、共同研究を「大手町の森」で開始 都市緑地がウェルビーイング向上に与える影響を科学的に検証(第18870号)

 東京建物株式会社と国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所は、都市緑地が人々のウェルビーイング向上に与える影響を科学的に検証するため、東京都千代田区の「大手町タワー」敷地内の緑地「大手町の森」で共同研究を開始した。森林総研と不動産デベロッパーによる共同研究は、今回が初となる。

 「大手町の森」は、2014年に竣工したオフィス・ホテル・商業施設等からなる大規模複合施設「大手町タワー」の敷地の約3分の1、約3600㎡に広がる広大な都市の森。建物の竣工に合わせ、千葉県君津市内の山林で約3年間をかけて実際に木々や草花を育成する「プレフォレスト」という手法により土壌や植物が移植されている。2013年の完工以来、自然の森に近い形での管理が継続されており、皇居外苑など周辺の緑地も含めたエリア一帯で生態系ネットワークが形成されている。

 敷地内は開発前後の比較で気温が平均1.7℃低下するなど、ヒートアイランド現象を緩和する効果もあり、周辺のワーカーや来訪者の憩いの場となっている。また、土壌や貯水槽を活用して雨水を一時貯留することで、ゲリラ豪雨の際に内水氾濫等を防ぎながら、潅水へ再利用している。

 完工当時107種だった植物類は、その後、日照を好む種が減少し、日陰を好む種が増加するなど、環境に合わせた適者生存・競争の結果、2021年には208種となった。この中には、シロヤマブキ、ヤマブキソウ、アスカイノデ、イカリソウなど、国や東京都のレッドリストに掲載される希少種も含まれている。また、昆虫類では同様にウラナミアカシジミ、セスジイトトンボなど計129種、鳥類はタカやハヤブサなど計13種が確認されている。

 共同研究では、大手町エリア周辺のワーカー30名を対象に、ストレスホルモンや交感神経活動等のバイタルの計測、質問紙を用いた心理調査によって、「大手町の森」への滞在が身体的・精神的健康に与える影響を調査・分析することで、近年注目されている都市緑地が人々のウェルビーイング向上に与える影響を科学的に検証する。また、ヒートアイランド現象の緩和効果の調査・分析等を行うことで、都市緑地の多面的な価値を定量化・可視化することを目指すとしている。