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御蔵島で野生化ネコがオオミズナギドリを大量捕食(第18858号)

御蔵島のオオミズナギドリ

森林研究・整備機構森林総合研究所、東京大学、北海道大学、かながわ野生動物サポートネットワーク、山階鳥類研究所の研究グループは、伊豆諸島御蔵島で、野生化したネコが最低でも年間約3万5000羽のオオミズナギドリを捕食していることを明らかにした。

オオミズナギドリは、東アジア地域の主に日本の島々で繁殖する海鳥で、国際自然保護連合のレッドリストでは準絶滅危惧種に指定されている。森林の地面に横穴を掘って集団繁殖するという特徴を持つ鳥で、かつては日本の多くの島で繁殖していた。しかし、警戒心が極めて低く、イタチやネコなどの外来哺乳類がいる島を中心に、繁殖地が次々と消失してしまったと言われている

御蔵島は、オオミズナギドリの世界最大の繁殖地であるが、繁殖個体数は急激に減少しており、島の森林に野生化しているネコによる捕食がその最大の要因として考えられている。

研究グループは、御蔵島で野生化しているネコの冬季の食性を調査。その結果、オオミズナギドリの繁殖のための帰島を人が感知するよりもずっと早いタイミングで、ネコがオオミズナギドリを捕食し始めていることが分かった。この結果は、従来の調査によるオオミズナギドリの最も早い帰島記録より5週間早い。また、ネコがオオミズナギドリを探知し、捕食する能力が極めて高いことを示唆している。

次に、この新たな知見に基づき、御蔵島におけるネコ1頭当たりの年間オオミズナギドリ捕食数を推計。その結果、これまでの研究チームの推定値である313羽から330羽に更新された。さらに、オオミズナギドリがネコに捕食される総数は、年間で少なくとも3万4980羽と推定された。

また、オオミズナギドリ以外にも、国内希少野生動物種で国の天然記念物であるアカコッコ、準絶滅危惧種で国の天然記念物であるカラスバト、オオコノハズクの3種の陸鳥の捕食も確認され、陸鳥全体で最低でも年間2120羽がネコに捕食されていると推定された。

現在、御蔵島における野生化ネコ対策は、御蔵島村、有志グループによる小規模な体制にとどまっている。今回の研究結果を踏まえ、国や都も含めた関係機関が一丸となり、問題の終わりを見据えた対策を一刻も早く進めていくことが望まれている。

この研究成果は、4月23日に国際学術誌「Mammal Study」にオンライン掲載された。