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トドはヒトの動作を「模倣」する能力をもつ 麻布大講師らが世界初発見(第18856号)

麻布大学獣医学部動物応用科学科伴侶動物学研究室の今野晃嗣講師、城崎マリンワールド(兵庫県豊岡市)の佐々木雅大氏、木下日波乃氏による共同研究グループは、『ハマ』と名づけられた飼育下のトドがヒトの動作を〝模倣〟する能力をもつことを世界で初めて明らかした。

人間の子どもは誰かの真似をしながら多くのことを学ぶが、ヒト以外の動物は他個体の動作そのものを模倣することが得意ではない。しかし最近、Do As I Do(まねして)トレーニングという教育手法が開発され、この手法を用いると、イヌやネコといった伴侶動物やシャチやベルーガなどの飼育下の鯨類でも、一部の個体では他個 体の動作を「模倣」できるようになることがわかった。

そこで共同研究グループは、城崎マリンワールドで暮らしているトド『ハマ』(メス・現在14歳)を対象にDo as I doトレーニングを行い、トドが飼育員の人 物の動作と同じような動作を〝模倣〟できるかどうかを調べた。

その結果、ハマはDo as I doトレーニングのルールをすぐに学習し、Do as I doでトレーニングしたことのない動作をヒトが行ったときでも、自分がこれまでに学習した動作のなかからヒト の動作と似たような動作を選んで〝模倣〟することができた。

さらに驚くべきことに、過去に一度も教えていない動作をヒトがやって見せたところ、ハマはそのうち2種類のまったく新しい動作についても〝模倣〟することができた。

この研究は、鰭脚類がヒトの動作を〝模倣〟する能力をもつことを示した世界で初の報告となる。ハマが示したような〝模倣〟能力が他のトドの個体でも再現できるかはまだ明らかになって居ないが、今回の研究結果から、これまで考えられていた以上にトドが高い社会的学習能力を有していることだけでなく、異種動物であるヒトから多くの情報を学んでいることがわかった。

この研究成果は、ドイツと英国に本部を置くシュプリンガーネイチャー社の国際学術誌「Animal Cognition」に6月20日付で掲載された。