官庁通信デジタル

KANCHO TSUSHIN DIGITAL

官庁通信デジタル

BUNKYO DIGITAL
関東地方の太平洋沿岸で新種のノリ発見 「クロシオアマノリ」と命名(第18852号)

江の島で採集されたクロシオアマノリの葉状体(左:メス個体、右:オス個体、スケールバー10cm)

 東京海洋大学、水産研究・教育機構水産技術研究所、千葉県立中央博物館分館海の博物館、北里大学らの研究グループは、関東地方太平洋沿岸でオニアマノリとされてきた野生ノリが新種であることを明らかにした。

近年、日本のノリの生産量は、色落ち被害や温暖化による海水温の上昇で減少している。また、現在のノリ養殖株のほとんどは北方種スサビノリの一品種であるナラワスサビノリであり、遺伝的画一化の進行といった課題も抱えている。そのため、温暖化に対応した新たなノリ栽培種の育成に向けて南方系野生ノリを収集し、育種素材として利用していくことが重要となっている。

研究グループは、スサビノリと比較して南方に生息するオニアマノリに着目。日本各地でオニアマノリとされてきたサンプルを収集し、分子系統解析と形態観察を実施した。その結果、神奈川県江の島、房総半島南端の千葉県白浜、東京都の伊豆諸島など、関東地方の太平洋沿岸でオニアマノリとされてきた野生ノリが新種であることを明らかにし、「クロシオアマノリ」と命名した。

また、オニアマノリが、大きく「日本海沿岸に広く分布する系統」と「東シナ海と日本海南西部の一部に分布する系統」の二系統に遺伝的分化していることをつきとめた。

研究グループでは今後、新種クロシオアマノリとオニアマノリをはじめとする日本産アマノリ属南方種を育種素材として活用し、生長特性や水温耐性の違いを調べるとともに、選抜育種や突然変異種、クロシオアマノリとオニアマノリの種間交雑育種などにも取り組み、温暖化に対応した新たなノリ栽培種の育成を目指していく方針だ。