国立長寿医療研究センターなどの研究グループはこのたび、コロナ禍に軽度認知障害(MCI) の高齢者へ行われたオンラインの運動教室について、対面形式の運動教室を比較した調査の結果を公表した。それによると、参加率はどちらの形式でも差がないことが明らかになった。さらに、十分な運動時間が確保できれば、運動強度(※)も対面形式と同程度に達する可能性があるとしている。
※ 認知機能低下予防には、中から高強度の運動が有効だとされている。調査では心拍数を基に運動強度を評価し、運動強度が40%から80%になるように運動プログラムを提供した。
調査は2020年から2022年にかけて、東京都と愛知県に住む65歳から85歳までのMCIをもつ高齢者207人を対象に実施。参加者には、リストバンド型活動量計、タブレットPCを配布し、生活習慣病の管理、週1回の運動教室、栄養相談、タブレットPCを用いた認知トレーニングを提供した。
東京都では全78回の運動教室のうち、24回をオンラインで行った。参加率の中央値は、対面が86%、オンラインが92%でオンラインの方が高い参加率を示した。また、運動強度の中央値は、対面が51.7%、オンラインが48.8%で両者に有意差は見られなかった。
一方、愛知県では全78回のうち、2回をオンラインで実施。参加率の中央値は、対面が92%、オンラインが100%だった。これに対し、運動強度の中央値は、対面が48.1%、オンラインが32.4%と、オンラインの運動強度が対面より低くなっていた。この要因としては、オンラインの初回時に適切に接続できているかの確認や、安全性・実施手順の確認に時間を要したため、十分な運動時間を確保できなかったことが考えられるとしている。
調査結果を受け、研究チームは「オンライン運動教室は、移動が困難な高齢者や遠隔地に住む高齢者にとっても有用な選択肢となり得る。また、感染症流行時のみならず、災害発生時や悪天候などにより対面での運動機会が制限される場合にも、継続的な運動習慣を維持する手段としての活用が期待される」としている。