農研機構は、1893年に設立された農商務省農事試験場を前身とする国立研究開発法人。農業・食品分野では、国内最大の研究機関である。ブドウ「シャインマスカット」やサツマイモ「べにはるか」を育成した機関として知られており、農業・食品分野での幅広い経験・データ、都道府県との連携などの蓄積がある。
また、2018年に就任した久間和生理事長の下、農業・食品分野における「Society5.0」の実現によって、①食料自給率向上と食料安全保障、②農産物・食品の産業競争力強化と輸出拡大、③生産性向上と環境保全の両立に貢献することを組織目標として掲げ、AI、データ、ロボティクスなどの共通基盤技術と農業・食品産業技術の融合により、明確な出口戦略に基づき、基礎から実用化までの各ステージで切れ目なく成果を創出することを目指している。
東京理科大学は、1881年に東京物理学講習所として創立された、歴史と伝統ある理工系総合大学。2031年には創立150周年を迎える。取組では、創設者たちの想いが込められた「理学の普及を以て国運発展の基礎とする」という建学の精神、徹底した「実力主義」に基づく高度な研究力・教育力により、広く社会に貢献してきた。
また、昨年、石川正俊学長主導により策定した「TUS SciTech構想」に基づき、現代社会が抱える超高齢化、地方創生、環境保全、省エネルギー等の複雑化する課題に対処するため、学内に留まらず学外機関とも有機的かつ密接に連携し、新たな「知」や「社会的価値」を共創する機能を強化する取組を進めようとしている。
◆両者の強みを融合して農業・食品分野を中核としたSociety5.0を実現
今回の包括連携協定は、両機関が双方の強みを融合させ、農業・食品分野を中核としたSociety5.0の早期実現を連携・協力して推進する体制を構築するために締結された。
今後、協定に基づき、両機関の強みを活かした大型プロジェクトや多様な層における人材交流を推進することで、農業・食品分野での技術基盤の裾野の拡大、社会実装の加速を図るとともに、多様な社会課題解決を支える次世代人材を共同で育成していく方針だ。
さらに、これらの取組を通じ、「農業×AI」などの新たな形での農業・食品産業の実現、農業・食品分野における多様な人材の活躍促進、未来につながる新技術の創出を図り、担い手不足解消や食料自給率向上などの農業・食品分野の課題だけでなく、超高齢社会におけるWell-beingの実現、地方創生など多様な社会課題の解決を目指していくとしている。