ミカヅキノエボシ(提供:Cheryl Lewis Ames et al.)
東北大学のエイムズ・シェリル教授らのグループは、新種のクラゲ「ミカツギノエボシ」を発見した。強い毒を持つカツオノエボシの仲間が、初めて東北で見つかった記録となる。近年の異常な海況変動が発見につながった一因と分析している。
カツオノエボシは熱帯から温帯に生息する。日本では沖縄から相模湾に分布しているが、日本の北部沿岸ではこれまで正式に確認されていなかった。ミカヅキノエボシは東北地方で活躍した武将である伊達政宗が、兜(かぶと)に用いた三日月形の前立てに由来して名付けられている。
ミカヅキは宮城県仙台市の蒲生海岸に打ち上げられているところを採取。黒潮の北上が日本南方で生活する同種を東北に運んだと推測されている。海流シミュレーションによれば、約30日で相模湾から仙台湾に、45日間で青森沿岸まで到達できることが示唆されたという。
グループは「気候変動にともなう海洋生物の移動や分散を理解するうえで、重要な知見を提供するもの」とし、「クラゲ類の出現や分布の変化は、生態系だけでなく人の生活や安全にも影響を及ぼす可能性があることから、その動向を注意深く見守る必要がある」とコメントしている。