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ノコギリカメムシ、後足で菌を育成 寄生バチによる被害を防御 産総研ら

ノコギリカメムシ(提供:産業技術総合研究所)

産業技術総合研究所の深津武馬主席研究員らのチームは17日、ノコギリカメムシの鼓膜器官と考えられていた後ろ脚の構造が卵を守るため菌を培養する場所であったと突き止めた。同日付で米国の科学誌「サイエンス」に掲載されている。

ノコギリカメムシは15センチ程度に育つ黒いカメムシ。日本の本州と四国、九州などに生息し、ウリ科の植物をエサとしている。有名ではない虫であることから、研究はほとんど進んでいないという。

チームの深津研究員はノコギリカメムシが産卵時に、卵に後足をこする仕草を確認したと紹介。成熟したメスの後足にのみ現れるこれまで鼓膜器官と考えられた白い箇所から、菌が生えていることを確認したという。

ノコギリカメムシが卵を守るための菌をこすりつけている様子(提供:同)

産卵した後の卵は、数日で菌糸によって覆われる。日本に生息するノコギリカメムシはこの菌糸を使って、卵に産卵する寄生バチによる被害を物理的に防いでいると想定されるという。

記者会見で話す深津研究員

深津研究員は「卵に菌を塗ることは通常危険であると思うが、ノコギリカメムシはそれをやっている」と説明。「病原菌のようなリスクが高いものでない菌を選べていることがポイントである」と伝えた。