官庁通信デジタル

KANCHO TSUSHIN DIGITAL

官庁通信デジタル

BUNKYO DIGITAL
ES細胞で卵子の前段階まで作成 試験管での培養研究に貢献 京大

京都大学

京都大学の斎藤通紀教授らの研究グループは1日、マウス多能性幹細胞(ES細胞)から始原生殖細胞(PGC)を経て、前身細胞を使わずに卵子が減数分裂を開始する前段階である卵核胞期の卵母細胞を誘導する方法論を開発した。ほ乳類の試験管内造成研究を推進する重要なマイルストーンになるとしている。

ほ乳類の卵子の前身細胞である「卵母細胞」の発生は4段階のプロセスで進行する。まず、精子や卵子のもとになる始原生殖細胞が発生、胎生期の卵母細胞形成と減数分裂の開始、出生後の卵母細胞の成長、成熟・排卵となる。

卵母細胞の発生には、卵巣に存在する「卵巣体細胞」との相互作用が必須とされ、発生メカニズムの解明を困難にしていた。今回の研究では卵巣体細胞を使わずに卵母細胞の発生を再現することに挑戦している。

研究では、グループが開発したES細胞などを起点とするマウスPGC様細胞を胎⽣期の初期の卵⺟細胞に分化させる⽅法をもとに、シグナル分⼦の添加タイミングを最適化した。胎⽣期の発⽣過程を完了した卵⺟細胞を、卵巣体細胞を⽤いずに⼤量に誘導することに成功している。

斎藤教授は「卵巣の前駆細胞を人から提供いただいて培養法の研究は極めて難しい」と説明。「試験管の中で、培養する方法を検証できれば医療にダイレクトにつながる」と今回の研究成果の意義を話した。

研究成果は1日付の米学術誌「ディベロップメンタルセル」でオンラインで掲載されている。