九州大学の菊池良和助教
九州大学の菊池良和助教らの研究チームは27日、日本全国の大学を対象としてきつ音者の社会的障害を取り除く「合理的配慮」の実態を初めて調査したと発表した。配慮申請を行う際に、使われる根拠資料は「医師の診断書」が最多の27校、補助内容は担当教員への周知が多く行われていた。言語聴覚士による証明書が資料として使わない大学の存在を疑問視している。
一昨年の4月に改正障害者差別解消法が施行され、国公立だけでなく私立大学も合理的配慮が義務化された。きつ音の人に対する支援の状況が不明確であることから、チームは実態調査を行っている。
調査は2024年の1から3月に、全国751大学を対象に実施。2023と22年に合理的配慮を受けた学生数、具体的な対応などに関するアンケートを行い145校から回答を得ている。
それによると23年度に配慮を受けたきつ音学生は47人(国公立27人、私立25人)であった。前年度から20人程度増加していた。配慮方法は担当教員への周知に続いて「特定科目の発表方式の変更(筆談、事前録画など)」が45.5%、「出席の返事の配慮」27.3%であった。申請のための根拠資料は診断書や専門家の意見書、障害者手帳などが利用される傾向にあったという。
菊池助教は根拠資料に障害者手帳や医師の診断書しか示していない大学が多く存在することを問題視。「きつ音支援の専門家である言語聴覚士にかかっていても、医師の診断書のみを要求する大学があることが問題点だ」と指摘する。「大学側ときつ音学生の双方に周知の必要がある」とコメントしている。