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新種のティラノ「カンクウルウ・モンゴリエンシス」を発見 アジア起源説を発表

発見されたカンクウルウの復元画(提供:服部雅人)

北海道大学の小林快次教授とカナダのカルガリー大学の研究グループは12日、新種のティラノサウルス「カンクウルウ・モンゴリエンシス」を発表した。ティラノサウルスの北米起源説を引っくり返し、アジア起源を提唱している。英科学誌「ネイチャー」に同日付で掲載されている。

カンクウルウは1972年代にモンゴルの学者であるアルタンゲレル・ペレ氏によって発見され、ティラノサウルス上科の「アレクトロサウルス」に分類されてきた。だが、鼻すじの骨の中央部に浅く粗面をもつ縦走稜があり、隆起した領域の大部分にわたって延びている点などの特徴から新種と判断された。

モンゴル語の「王子」と「竜」を結合させた言葉がカンクウルウ。「モンゴルの王子の竜」という意味を持たせて命名した。グループは、白亜紀最末期(約8600万~6600万年前)に北米やアジアで繁栄した大型のティラノサウルスの最後の共通祖先に近い存在と分析。ティラノサウルス類が「北米起源で単線的に巨大化した」という説を覆すという。

小林教授らは大型ティラノサウルスがアジアで誕生し、北米に渡った後に亜科に分岐していったと発表。アジアと北米を舞台に進化が異なる「異時性進化」が、ティラノサウルスで起きていたとしている。

カンクウルウは体重が500キロ未満と推定され、細く平たい歯など幼いティラノサウルスと似た特徴がある。成体になっても幼体の特徴を維持し、細身で浅い頭を持つスピード型の種であったと想像されている。北米のティラノサウルスレックスは体重3.5キロで図太い歯を持つパワー型の恐竜であったと考えられている。

研究成果を発表する小林快次教授(提供:北海道大学)

小林教授は「ティラノサウルスの生態系の形成が説明できたことは非常に面白い」と説明。今後について、「アジアの恐竜の生態系や進化をどんどん追求していきたい」と力を込めている。