東北大学
東北大学の大原慎也准教授らの研究チームは、記憶の中枢である海馬と意思決定に関わる内側前頭皮質(MFC)をつなぐ神経を分析した。その結果、背側海馬の後部と情緒を制御する背側脚皮質(DP)が強く結びついていると解明した。うつ病や不安障害、ギャンブル依存と関与する可能性もあり、治療ターゲットとしての応用も期待される。
腹側海馬は感情の抑制や意思決定に関わる内側前頭皮質と強くつながっており、不安障害やうつ症状と関係があるとされる。その逆にある、背側海馬はエピソード記憶や情報処理を担う領域として知られるが、情動や自律神経とどのように関係しているかは分かっていなかった。
グループは海馬からMFCへの神経のつながりを調べた。細胞の標識を可能にする「神経回路トレーシング法」で、MFCニューロンを標識化したところ、MFCの腹側部にあるDPに標識ニューロンが多く確認された。
これまで注目されてこなかった背側海馬の後部とDPが強く結びついていることが明らかとなった。DPには恐怖や怒りを引き起こす「偏桃体」とホルモン分泌やストレスと深く関わる「視床下部」などに信号を送ることで知られ、背側海馬の後部と感情の関連が示唆される。
また、背側海馬の後部から入力を受けるDPの神経細胞は約4割がニューロンの興奮を抑える「抑制性ニューロン」と認められている。
グループは今後について、「背側海馬の後部とDPの回路が、どのような行動選択や感情のコントロールに関わっているかを実験で解明していく」と説明している。