慶応義塾大学
慶応義塾大学の若泉謙太専任講師らの研究グループは、新型コロナウイルス感染症の後遺症が新型コロナ特有の症状でないことを明らかにした。症状が現れた際に、新型コロナ以外の要因も検討しなければ治療の方向性を見失う可能性があると指摘している。
新型コロナの後遺症には睡眠障害や倦怠(けんたい)感、めまいなどの症状が報告されている。類似した症状がコロナ感染歴のない慢性痛患者にも見られることが知られており、グループは患者に起こるコロナ後遺症に似た症状を調査した。
研究では、新型コロナの研究チーム「JACSIS」が2022年に実施したインターネット調査の結果を利用。約3万人を対象に感染歴と慢性痛の有無を「コロナなし/慢性痛なし」「コロナあり/慢性痛なし」「コロナなし/慢性痛あり」「コロナあり/慢性痛あり」の4群に分けた。後遺症の代表的な17症状の有無も確認している。
その結果、後遺症症状はコロナあり/慢性痛ありが最多。コロナなし/慢性痛あり、コロナあり/慢性痛なしの順に続いた。新型コロナにかかったことがない人も慢性痛がある場合に、後遺症症状を抱えていることが分かった。
統計分析をしたところ、慢性痛がある人は健康な人と比較して、中枢神経症状や呼吸器症状、消化器症状などの発症リスクが高いと認められている。
岩泉専任講師らは「コロナ後遺症に対する理解を深める上で重要な視点を提供するものである」と評価。「後遺症の背景にある病態の解明を進め、治療法の開発などにつながっていくことを期待する」としている。