イソギンチャクを住処にするクマノミ類「トマトアネモネフィッシュ」(撮影:マーレーンクラン)=OIST提供
沖縄科学技術大学院大学(OIST)のナターシャ・ルー博士らの研究チームは、100年以上謎とされてきたクマノミ類がイソギンチャクの触手に刺されない要因を発見した。学術誌「BMCバイオロジー」に15日付で掲載されている。
クマノミ類はイソギンチャクの内部に生息するが、イソギンチャクの触手からどのように守られているのかは不明であった。チームは体を覆う粘液に一因があると考えて調査を開始した。
イソギンチャクと共生関係にあるクマノミ類とないスズメダイ類の粘液サンプルを分析した。イソギンチャクが毒針発射の合図とする体表の「シアル酸」を、感知できないほど低い値になるようにクマノミ類が進化していると判明した。
また、幼魚の間のみイソギンチャクと共生する「ミツボシクロスズメダイ」も解析。結果、ミツボシクロスズメダイも幼魚段階では、シアル酸のレベルが低下していたという。
チームはシアル酸をクマノミ類が維持している要因として「粘液産生細胞がシアル酸を切断する酵素を高い値で発現している」と「粘液の微生物叢にいる細菌がシアル酸を分解している」という2つの仮説を立てている。
OISTのヴィンセント・ラウデット教授は「他の要因としては、魚の鱗の厚さ、種間の栄養素の交換、イソギンチャク自体の調整などが考えられる」と紹介。今後はクマノミ類がイソギンチャクの毒に敏感に反応するような操作を試みて、仕組みを証明することを目指すという。