ツバキ科のモッコク(東京都千代田区)
京都工芸繊維大学の半場祐子教授と九州大学の久米篤教授は20日、大気汚染の改善が街路樹の光合成効率を高めたと発表している。15年間でツツジやサクラの光合成能力は4分の1向上したという。半場教授らは今後の電気自動車(EV)の発展に期待を寄せている。
都市部の樹木へ影響を与えるストレス要因として大気汚染が挙げられる。国内主要都市の二酸化炭素(CO2)濃度は1990年代以降で低下したが、街路樹の光合成機能に与えた影響を調査した報告はほとんどなかった。
研究グループは京都市と南丹市、大津市に生えるイチョウ、サクラ、ツツジを対象とした調査を2005~23年まで実施。光合成速度とストレスを数値化できる水利用効率を分析した。
研究では05~08年と20~23年を比較。15年間でCO2濃度は60%低下し、ツツジやサクラの光合成は25%増加、水利用効率も減少していたことからストレスも減っていた。自動車から排出される物質の削減を進める法律「⾃動⾞ NOx・PM 法」の制定が大きな影響をもたらしたとしている。
グループは「大気汚染対策が樹木の光合成能力を高めたことを示した研究の意義は大きい」と評価。「電気自動車の導入で汚染物質が減少すれば、街路樹の光合成能力は大きく改善される」と推測している。