(左から)全漁連の坂本雅信・代表理事長、日本財団の笹川陽平会長、東京大学の兵頭晋・大気海洋研究所所長
日本財団と全国漁業協同組合連合会、東京大学は20日、日本の沿岸域を対象とした「海洋環境変化対応プロジェクト」の始動を発表した。漁業者と研究者が連携して、日本で初めて全国規模で海洋環境を調査する。今年4月から本格的に開始し、環境の変化を明らかにしていく。
全漁連の坂本雅信・代表理事会長は会見で、「海水温や海流の変化で海洋生物に変化が起きている」と説明。海の情報を漁業者が収集して、それを学者に分析してもらい気候変動対策を進めていきたいと意義を伝えた。
全漁連は、藻場と干潟の減少や海水温の上昇により魚の分布に影響があり、漁獲量が激減したと指摘。例えば、全国でサケは2009年21万トンから23年6万トン、サンマは12年の22万トンから2.6万トンに減ったという。
プロジェクトは現場の若手漁業者などが海の状況を調べる「現場モニタリンググループ」とそのデータを研究する「分布・調査グループ」に分かれて実施する。現在は本格的に始める前の先行実施として12道府県で、水温と漁場を観測中だ。漁業者らの専用アプリ「FishGIS」で海の写真と動画、位置情報を記録している。
日本財団の海野光行・常務理事は「新しい養殖漁業や藻場の保存方法の選定など対策につなげたい」と話した。現場で漁業者としても働く漁協青年部連合会の川畑友和顧問は「昨年の分析でも、秋から冬にかけての水温の変化に2週間のズレが起きていた」と危機感を示した。