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44の星確認、遠方銀河の記録を更新 ダークマター観測に迫る

遠方銀河のドラゴン

千葉大学の大栗真宗(おおぐり・まさむね)教授らの研究チームは7日、自然の集光現象「重力レンズ」を利用して65億光年離れた銀河内の星を40以上発見したと発表した。遠方銀河内の単独の星発見数を大きく更新し、宇宙の進化の研究や存在するが確認できない謎の物質「ダークマター」に迫る成果だとしている。

地球から何億光年も離れた遠方銀河では、星が極めて暗くなるため内部の星を個別に観測できなかった。しかし、2018年から重力レンズを用いた新たな手法を使って遠方銀河にある星の検出が行われている。

研究チームは地球から約40億光年離れた銀河「ドラゴン」の観察をジェームズウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)を使って1年間実施。ドラゴンにある44の星を捉えることに成功した。これまでの遠方銀河における単独の星の確認は1、2個程度であり、大幅な記録更新となったという。

また、これまではJWSTで生まれたばかりの「青色超巨星」が多く確認されたが、今回確認した星は寿命を迎える「赤色超巨星」も含まれた。光を効率よく捉えられるJWSTだからこそ、温度が低い赤色超巨星も観察できたとしている。

重力レンズを使って星を解析することがダークマターの正体の発見につながる可能性もある。大栗教授は「ダークマターに関心があるので今回の成果を生かして、性質を確認する研究につなげたい」とコメントしている。

研究成果は英学術誌「ネイチャー・アストロノミー」の電子版に6日付で掲載された。

■重力レンズ

遠くの天体から出た光が銀河や銀河団の重力によって曲げられる現象。遠方天体からの光を虫眼鏡のように集めることで、遠方にある天体の明るさを増光する効果も生じる。