小野賢二郎教授
金沢大学の小野賢二郎教授らの研究グループは、製薬大手「エーザイ」と共同でアルツハイマー病患者の脳脊髄液を調査。認知症新薬「レカネマブ」と症状を引き起こす「プロトフィブリル」(PF)が結合したLec-PFの濃度が液中で上昇していたと7日に伝えた。レカネマブがアルツハイマーの進行を抑制する過程を解明している。
アルツハイマーは記憶障害や失語などの症状がでる病。タンパク質「アミロイドβ」や「タウ蛋白(たんぱく)」の蓄積により発症する。厚生労働省の調査では、認知症患者の約7割がアルツハイマー型とされる。レカネマブはアミロイドβを取り除き、その進行を抑える効果がある。
研究ではレカネマブがどの程度の濃度でアミロイドβやPFに効果を示すかを認知症患者ら約100人を対象に調べた。
その結果、アルツハイマー病患者の脳脊髄液中にはレカネマブが捕捉するLec-PFが存在すると判明。Lec-PFは神経変性に関連する高毒性の病態タンパクであると示唆され、レカネマブがアルツハイマー病の病態抑制効果を示す過程の一端が明らかになった。
小野教授は「レカネマブがどのような要因で患者の病態改善につながっているのかがブラックボックスだった」と紹介。「実際にアルツハイマーの原因であるPFを測定し、患者に起きている現象を確認できた」と意義を示した。今回の発見は「アルツハイマー病患者の予後予測にも活用できる可能性がある」としている。
研究成果は、同日付の米学術誌「アナルズ・オブ・ニューロロジー」の電子版に掲載された。