ホヤの幼生
甲南大学の日下部岳広教授と中部大学の大沼耕平博士は、背骨を持つ脊椎(せきつい)動物の頭部進化のカギを握る「神経是」(しんけいてい)が、無脊椎動物のホヤにも存在すると発見した。脊椎動物以外ではこれまで神経是は発見されていなかった。
脊椎動物には発達した脳と鼻、目、耳などの感覚器を備えた頭部がある。頭部の重要な部品の多くは神経是と、神経管を形成する「プラコード」から作られる。ホヤの幼生は体の作りが脊椎動物と似ており、最も近縁な生物とされている。
研究グループはホヤ胚の「a9.49 細胞」が神経是の性質を持つ原始神経是であることを明らかにした。この神経是は脳と表皮の境界で生み出され、その際にはたらく遺伝子の仕組みも脊椎動物と共通であると分かっている。
研究グループは「神経堤細胞は、さまざまな組織に分化する性質をもつため、再生医療やがん研究の分野でも注目されている」と説明。「神経堤に固有の性質を研究するモデル生物としてホヤを用い、研究が進展することが期待される」としている。